臨床で気になったことを紙やスマホに残していると、少しずつメモは増えていきます。
ですが、いざ見返そうとすると、こんなことが起こります。
- 以前調べた内容が、どこにあるか分からない
- 勉強会や動画のメモが、保存したままになっている
- 疾患別にまとめた知識が、目の前の動作や現象とつながらない
- Obsidianを入れてみたものの、設定項目が多くて手が止まった
メモを残す習慣はあるのに臨床で活かせない——それは勉強不足とは限りません。
その原因は、メモの入口と、あとから見つけるための置き場所が決まっていないことです。
真面目な人ほど、使い始める前にフォルダやプラグインをきっちり整えようとします。
ところが、設定に時間をかけた結果、その日に感じた疑問が一つも残っていない、ということも珍しくありません。
この記事では、Obsidianを使うと決めた新人PTに向けて、インストールから最初の1週間までを順番に整理します。
- Obsidianを始めるタイミング
- インストール、日本語化、Vault作成の流れ
- PTの勉強メモに使う4つのフォルダと、その理由
- 最初の1メモを臨床へ戻す書き方
- 患者情報を個人メモへ残さないための境界
- プラグインを追加する判断基準
00_Inboxを使った最初の1週間の回し方
Obsidianが自分に合うか迷っている方は、先に全体像を確認してみてください。

Obsidianを始める前に、メモの目的を一つ決める
Obsidianにはフォルダ、タグ、リンク、グラフビュー、プラグインなど、多くの機能があります。
設定を考え始めると、何を選べばよいか分からなくなりがちです。
設定の前に目的を一つだけ決めておきます。
PTの勉強でObsidianを使う目的
以前の疑問を必要な場面で探し直せるようにすること
この目的が決まっていれば、使わない機能を増やさずに済みます。
Obsidianが役立つのは「探し直したい」が増えた段階
メモが数枚しかない時期は、紙やスマホのメモでも困りません。
今日の疑問を残し、翌日に確認できているなら、急いで道具を変える必要はないでしょう。
Obsidianが選択肢になるのは、次のような変化が出てきたときです。
- 同じことを何度も調べている
- 以前の勉強会メモが見つからない
- 「膝OA」のメモを「膝折れ」や「疼痛」の視点でも探したい
- 参考書、動画、先輩からの助言が別々の場所にある
- メモ同士の関係をあとからたどりたい
新人指導で勉強ノートを確認すると、「どこに書いたか分かりません」ということが多いのが実情です。
初期設定のゴールは「1つ残して、1つ見つけられる」こと
初期設定は、次の3つができていれば設定完了です。
- 今日の疑問を迷わず保存できる
- 後日、検索やリンクからそのメモを見つけられる
- メモを見て、次の臨床で確認することが分かる
たとえば、歩行練習で立脚期の膝折れが気になったとします。
PTLab運営見た目を整えたり、グラフビューを広げたりするのは、そのあとで構いません。
ObsidianをインストールしてVaultを作る


最初の作業は、Obsidianを使える状態にすることです。
インストールの手順を解説していきます。
公式サイトからインストールする
Obsidian公式サイトからダウンロードできます。
WindowsならWindows版、MacならmacOS版を選び、ダウンロードしたファイルを開いて画面の案内に沿って進めてください。


インストール後にObsidianを起動できたら、次の3点を確認します。
- 新しいVaultを作成できる画面が表示される
- 保存先を自分で選べる
- 設定画面を開ける
スマホ版もありますが、初回はフォルダ構成を確認しやすいPCで始めると作業がスムーズです。
Vaultは勉強メモ専用で一つ作る
Obsidianでは、ノートをまとめて保存する場所を「Vault(ボルト)」と呼びます。



Vaultは、勉強用の本棚を一つ作るイメージです。
PTの勉強メモを始める段階では、複数のVaultへ分けるより、一つのVault内で管理するほうが探しやすくなります。
名前は、自分が用途を判断できるものであれば問題ありません。
PT_StudyPT_LearningClinical_Learning
保存先を選ぶときは、あとから自分で場所を確認できるフォルダを指定しましょう。
日本語化の設定方法
起動直後が英語表示のになっています。
設定画面の言語項目から日本語へ切り替えましょう。
- 画面左下の歯車アイコンから設定を開く
- 一般設定の中にある言語項目を探す
- 日本語を選ぶ
- メニューが日本語表示になったことを確認する
この段階では、テーマ、外観、ホットキー、コミュニティプラグインなどの設定はおこないません。
見た目を整えるとそれで満足し、肝心のメモを一つも書かずに終わってしまうことがあります。
最初に作るフォルダは4つに絞る


フォルダ構成は、解剖学、運動学、疾患、評価、介入など、学校で学んだ科目をそのまま分類にしてはいけません。
なぜなら、臨床の疑問は一つの科目に収まらないからです。
たとえば、「立脚期に膝が折れる」という一つの現象にも、疼痛、筋力、荷重量、感覚、疲労、歩行補助具などが関係します。
最初から細かく分けると、保存するたびに「どこへ入れるか」で止まってしまいます。
内容の種類ではなく、メモが今どの段階にあるかで4つに分けます。
00_Inboxは、分類する前の疑問を止めないために作る
4つの中で最も重要なのが00_Inboxです。
臨床後に「立脚期の膝折れが気になった」と思っても、その場で原因を整理できるとは限りません。
保存先まで考えようとすると、筋力なのか疼痛なのか、歩行分析なのか疾患別なのか決められず、結局メモ自体を残さなくなります。
00_Inboxでは分類しません。疑問をそのまま置きます。
立脚期に膝折れが出たとき、最初に何を確認するか。
残りの3フォルダは、整理後の行き先として使う
01_Clinicalには、明日の評価・記録・相談で使える形にしたメモを入れます。
たとえば、立脚期の膝折れについて調べたあと、次のように残します。
立脚期の膝折れを見たら、筋力だけで決めつけない。
疼痛、荷重量、疲労、足部の接地、歩行補助具の使い方を順に確認する。
02_Referenceには、その考えの材料にした参考書、論文、勉強会、動画の内容を残します。
情報源のタイトルや該当ページと、「自分は何を知りたくて見たのか」をセットで書くと、あとから使いやすくなります。
情報源: 歩行分析の参考書 〇章
確認したかったこと: 立脚期に膝関節が安定するための条件
明日使うこと: 疼痛と荷重量を確認してから筋力評価へ進む
動画学習のメモ化については、こちらの記事で詳しく整理しています。
03_Journalには、自分自身の行動を振り返って書きます。
今日は膝折れを見てすぐ筋力低下だと考えた。
明日は介入前に疼痛と荷重量を確認する。
4つのフォルダは、知識を完璧に分類するためのものではありません。
疑問を受け止め、情報源を確認し、臨床で使う形へ変え、自分の判断を振り返る——その流れを支える仕組みです。
最初の1メモを「明日見ること」まで書く
フォルダを作ったら、00_Inboxにメモを一つ作ります。
ここで長いノートを書こうとすると、調べ終わるまで保存できなくなりがちです。
最初のメモは、疑問と次の行動が分かる長さで書きます。
疑問・確認したこと・明日見ることの3行で始める


最初のメモには、次の3項目があれば使えます。
- 今日の疑問
- 短く確認したこと
- 明日見ること
膝折れを例にすると、次の形になります。
- 今日の疑問:
- 立脚期に膝折れが出たとき、最初に何を見るか。
- 確認したこと:
- 筋力だけでなく、疼痛、荷重量、疲労、足部の接地も確認する。
- 明日見ること:
- 介入前後の疼痛と荷重量の変化を確認する。
関連する言葉を[[立脚期]]、[[膝折れ]]、[[疼痛]]のようにリンクしておけば、同じ現象が出てきたときに過去のメモをたどれます。
大切なのは、翌日の自分がメモを開いたとき、何を確認するか迷わずに済むことです。
患者情報ではなく「現象・判断・学び」を残す
臨床メモを作るときは、個人の勉強メモと診療記録を混同しないよう注意します。


残すのは、自分が学び直したい臨床上の現象です。
勉強メモとして残す書き方:
術後の歩行練習で疼痛が強い場面では、荷重量がどう変わるかを確認する。
介入前後で疼痛部位、NRS、支持の程度を比較する。
この書き方なら、個人情報を持ち出さずに、自分の評価視点を残せます。
プラグインは「困った理由」が分かってから追加する


Obsidianには、Calendar、Templater、Editing Toolbarなどのプラグインがあります。
便利ですが、初期設定の段階ですべて入れる必要はありません。
プラグイン選びから始めると、目的がり替わり、自分が何に困っているのかが見えなくなります。
Obsidianを使い、「もっと便利に使いたい」と思うようになったらプラグインの導入を検討しましょう。
標準機能で1週間使い、不便を言葉にする
初週に使う機能は、次の3つで足ります。
- メモを書く
- フォルダへ移動する
[[ ]]で関連する言葉をリンクする
1週間使ったら、不便だった場面を振り返ります。
| 実際に困ったこと | 次に検討する機能 |
|---|---|
| 毎日同じ項目を書くのが負担 | テンプレート機能 |
| 日付ごとの振り返りを開きにくい | デイリーノート、Calendar |
| Markdown記法で手が止まる | Editing Toolbarなどの入力補助 |
| メモ同士の関係を整理したい | リンク、Zettelkastenの考え方 |
テンプレートやデイリーノートを使いたくなったら、次のステップとしてこちらの記事を参考にしてみてください。


翌日の行動が書かれているかを確認する
太字、色分け、アイコン、グラフビューを整えると、ノートが完成したように見えます。
ですが、見た目が整っていても、「明日何を見るか」が書かれていなければ臨床へは戻せません。
新人の症例レポートや勉強ノートを見ていると、きれいに整理されている一方で、「次に何を確認する?」と聞くと答えが止まることがあります。
知識がないのではなく、情報と次の行動がつながっていない状態です。
明日の評価・記録・相談のどこで、このメモを使うか。
一つ答えられれば、装飾がなくても臨床で使えるメモになっています。
初期設定後の1週間は、同じ疑問を一度だけ循環させる
初期設定が終わったら、メモの数を増やすことより、一つの疑問を00_Inboxから臨床へ戻すところまで試してみます。
膝折れの例なら、次のように進みます。


この流れを一度経験すると、各フォルダの役割が操作としてではなく、実感として分かるようになります。
週末の整理は15分で、残すメモを一つ選ぶ
週末にすべてのメモを清書しようとすると続きません。
15分だけ時間を決め、今週いちばん役立った疑問を一つ選びます。
選んだメモについて、次の順番で確認してみてください。
- 疑問の答えが少しでも分かったか
- 次の臨床で確認できたか
- 今後も見返すなら、どのフォルダへ置くか
- 情報源を残す必要があるか
- 個人情報や職場内部情報が混ざっていないか
整理できなかったメモは、00_Inboxに残しておいて構いません。
Obsidian初期設定で起こりやすい4つの失敗


設定で止まる人には、共通するパターンがあります。
あらかじめ知っておくと、ツールに振り回されにくくなります。
フォルダを増やしすぎて保存先を決められない
脳卒中、整形、神経、解剖、運動学、評価、治療、論文。
細かく分けると、一つのメモが複数のフォルダに当てはまってしまい迷ってしまいます。
この迷いは、本人の整理力が足りないのではなく、臨床の現象が一つの分類に収まらないために起こるものです。
分類を増やすのは、同じ種類のメモが増え、「このまとまりだけ分けたほうが探しやすい」と感じた段階にしましょう。



保存先で迷ったら00_Inboxへ戻しましょう。
プラグイン探しで勉強時間を使い切る
おすすめプラグインを調べ始めると、次々に便利そうな機能が見つかります。
ところが、導入・設定・試用を繰り返しているうちに、肝心の臨床の疑問が残っていません。
対処法は、追加の条件を一つ決めておくことです。
同じ不便を1週間に3回感じたら、その不便を解決する機能を一つだけ探す。
追加してみて使わなければ、外して構いません。
設定を維持することより、疑問を残す流れを止めないことを優先します。
きれいに整えることが目的になる
リンクやグラフが増えると達成感があります。
ただし、グラフが大きくなることと、評価や記録が具体的になることは同じではありません。
メモの価値は、見た目ではなく、次のどれかへ戻せたかどうかで判断します。
- 評価で確認する項目が増えた
- 介入目的を説明しやすくなった
- 記録へ理由を書けた
- 先輩への質問が具体的になった
初期設定の次は、困り方に合わせて一つだけ進む


初期設定後に、すべての機能やノート術を続けて学ぶ必要はありません。自分が次に困っていることに合う記事を一つ選んでください。
| 次に困っていること | 読む記事 |
|---|---|
| Obsidianが自分に合うか、まだ判断できない | Obsidian入門 |
| 毎日の臨床メモを同じ型で残したい | Obsidian臨床推論テンプレート |
| メモ同士を現象や仮説でつなぎたい | Zettelkastenノート術 |
| 紙、スマホ、アプリを含めてノート全体を見直したい | 理学療法士の勉強ノート術 |
| 動画で学んだ内容を臨床へ戻したい | リハノメ活用法 |
まとめ


Obsidianの初期設定で大切なのは、機能をそろえることではありません。
今日の疑問を迷わず残し、あとから見つけ、次の臨床で一つ確認できる流れを作ることです。
始めるときは、次の順番で進めます。
- Obsidianをインストールし、勉強用Vaultを一つ作る
- 日本語表示にして、保存場所を確認する
00_Inbox、01_Clinical、02_Reference、03_Journalを作る- 今日の疑問を
00_Inboxへ一つ入れる - 疑問・確認したこと・明日見ることの3行を残す
- 患者情報や職場内部情報を入れず、現象と学びへ置き換える
- 1週間後に、役立ったメモを一つだけ整理する



昨日の疑問を今日の行動へ戻せると、学び方が少しずつ安定していきます。
最初のメモは短くて構いません。
今日の臨床で説明できなかったことを一つ選び、「明日は何を見るか」まで書いてみてください。
その一往復が、Obsidianを勉強道具として使い始める最初の一歩になります。









コメント
コメント一覧 (2件)
初めまして。こちらのサイトで勉強させていただいております。Obsidianの4つのフォルダを作るところまでは実践しました。
ここから日々の学びをメモにしていくと思うのですが、それにあたって疑問点や要望があります。
①メモを入れる手順としては、一旦00に入れる⇒整理し、要素を分けて01~03に入れる⇒整理した後のメモは00から削除する というような感じでしょうか?00のメモは残しますか?
②臨床で出た疑問とは別で、まとまった時間に動画や本、セミナーで勉強して、役に立つと感じた事項をメモする場合も、一旦00に入れてから、後で整理するのが良いでしょうか?それとも、直接02に入れた方が良いでしょうか?
③まだ自分の理解が浅いのかと思いますが、記事によってメモの種類や書き方、型が少しずつ異なるような印象があり、イメージしづらいです。例えば、Obsidianの実際の画面を使って、どのファイルにどんなメモが入っていて、どのようにリンクしているのか、実例を見てみたいです。記事でも動画でも良いです。
①00(Inbox)のメモの扱いについて
おっしゃる通り、00で整理し、要素を01~03に分けたあとの元のメモは「削除」するか、「04_Archive(保管済)」のような別フォルダを作ってそこへ移動させるのがおすすめです。
00_Inboxは「未処理のメモ置き場」なので、処理が終わったら空っぽにしておくと、「まだ整理していないメモがどれか」がひと目で分かり、運用がとても楽になります。
②まとまった学習メモの保存先について
こちらは「メモを書く時の状況」によって使い分けてみてください。
最初から「これは〇〇のセミナーのまとめだ」と明確に決まっていて、じっくり書ける状態であれば、直接02_Referenceに作成して全く問題ありません。
一方で、動画を見ながらとりあえず殴り書きをしたような「まだ整理されていない荒いメモ」の場合は、一旦00_Inboxに入れておき、週末などに「明日の臨床で使う部分(01)」「情報源として残す部分(02)」に整理して分ける、という使い方がおすすめです。
③実際の画面や実例、メモの書き方について
記事によって書き方が少し異なって見えるとのこと、混乱させてしまい申し訳ありません。
実際の画面やリンクの様子をお見せできれば一番分かりやすいのですが、私のObsidian内には実際の患者さんの症状や具体的な臨床場面をベースにした記録が数多く含まれており、個人情報・機密保持の観点から、どうしても実際の画面を公開することが難しい状況です。ご希望にお応えできず、本当に申し訳ありません。
書き方や型が違って見える理由について少し補足させていただきますと、メモは「段階によって形が変わる」からです。
・00にある時:単なる「疑問」や「単語の羅列」
・01や02に整理された時:「明日の行動」が紐づいた文章
このように、メモが成長していくため、段階によって型が違って見えているのだと思います。
リンクのイメージとしては、テキストになってしまいますが以下のような形です。
【01_Clinicalに入っているメモ】
タイトル:立脚期の膝折れ評価
・介入前後の疼痛と荷重量の変化を確認する
・参考にした知識: [[02_〇〇歩行分析セミナーの記録]] ←※ここで02のメモへリンクを貼る
このように、「自分の臨床での行動(01)」と「その根拠となった情報源(02)」がリンクで繋がっていくイメージです。
最初は型にこだわりすぎず、「明日の臨床でどう使うか?」が書かれていればすべて正解、というルールでぜひ試してみてください。使っていくうちに、必ずご自身なりの「やりやすい型」が見つかってくるはずです。
少しでも参考になれば幸いです。また何かご不明な点や、使ってみてつまずいた点があれば、いつでもお気軽にコメントしてくださいね。応援しています!