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【理学療法士の勉強法】そのノート、自己満足かもしれません。「記憶」を「臨床力」に変える”第2の脳(Obsidian)”入門

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まだ私が新人だった頃、毎日こんな間違いを犯していました。

先輩に借りた医学書をコピーし、重要な部分にマーカーを引き、ルーズリーフに丁寧にまとめる。

週末は勉強会に参加し、スライドの内容を必死にメモして、家に帰ってからWordで「勉強会まとめ」を作る。

当時の私は、分厚くなっていくファイルを見て「自分は成長している」と信じて疑いませんでした。

しかし、翌日の臨床現場では、

「あれ、あの手技、どうやるんだっけ?」
「この症状、昨日の本に書いてあったはずだけど…」

勉強したはずの知識が、必要な瞬間に「出てこない」。

あなたにも、こんな経験はありませんか?

あなたにも、こんな経験はありませんか?

私は、多くの新人を指導する立場になり、確信を持って言えることがあります。

あなたの記憶力が悪いのではありません。「情報のしまい方」が間違っているのです。

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「この前の患者さんと似ているのに、なぜまたゼロから調べ直しているんだろう?」

従来の「綺麗にまとめるノート術」は、臨床家にとっては時に「足かせ」になります。

我々に必要なのは、情報を整理整頓された本棚に並べることではありません。

「患者さんの症状(現象)」を見た瞬間に、「原因と解決策(知識)」が勝手に脳内でリンクして飛び出してくるシステムです。

この記事は、単なる「便利アプリの紹介」ではありません。

あなたの脳の構造そのものを拡張し、10年後、20年後も通用する臨床家になるための「思考のOS(オペレーティングシステム)の入れ替え」を提案するものです。

その鍵となるのが、「Obsidian(オブシディアン)」というツールです。

これからお話しするのは、長年かけて辿り着いた「第2の脳」の作り方です。

もしあなたが、「真面目に勉強しているのに、臨床力が上がらない」と悩んでいるなら、この記事がその壁を壊すきっかけになるはずです。

この記事でわかること
  • なぜ、今までの「勉強ノート」が臨床で役に立たなかったのか
  • 理学療法士の脳(臨床推論)を再現する「リンク思考」とは
  • 知識を「消費」せず「資産」にする、具体的な学習マインドセット
目次

なぜ、あなたの勉強は「臨床」で役に立たないのか

Obsidianというツールの話をする前に、まずは「なぜ、従来のノート術では臨床力が上がらないのか」という、現実と向き合う必要があります。

ここを理解しないまま新しいツールを使っても、結局は「道具が変わっただけ」で終わってしまうからです。

理由は大きく分けて3つあります。

ノートが「情報の墓場」になっていませんか?

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あなたが過去に作った「勉強ノート」、直近1ヶ月で何回見返しましたか?

おそらく、「0回」か、あっても「1回」ではないでしょうか。

これが最大の問題です。

紙のノートやWord、PDFといった従来の記録方法は、書いた時点で情報が行き止まりになってしまいます。

例えば、「変形性膝関節症(膝OA)」についてまとめたノートがあるとして、そこには、膝の解剖や運動学がびっしり書かれているはずです。

しかし、実際の臨床現場はどうでしょうか?

膝OAの患者さんに、「足部の過回内」や「股関節の可動域制限」が合併していることは日常茶飯事ですよね。

この時、あなたの脳内では以下のようなことが起きています。

  • ノートA: 膝関節の知識
  • ノートB: 足部の知識
  • ノートC: 股関節の知識

これらが別々のノート、別々のファイルとして保管されているため、いざという時に繋がらないのです。

「膝のノート」を開き、次に「足部のノート」を探し……なんてことをしている時間は、臨床現場にはありません。

結果として、せっかく書いたノートは「情報の墓場」と化します。

これが「勉強したのに成長しない」という感覚の正体です。

人間の脳は「フォルダ分け」に対応していない

もう一つの問題は、私たちがパソコンの管理方法(フォルダ分け)に慣れすぎていることです。

多くのPTは、PCの中にこんなフォルダを作っているのではないでしょうか?

Dドライブ > 勉強会資料 > 2024年 > 膝関節 > 論文 > 整形外科 > 術後リハ

このように階層(フォルダ)で情報を分けるやり方は、整理整頓されているように見えて、実は人間の脳の構造と決定的に相性が悪いのです。

人間の脳は、「フォルダ」など持っていません。

ある記憶(点)とある記憶(点)が、「連想」という線で繋がっているだけです。

  • 「リンゴ」と言われたら「赤い」を思い出す。
  • 「赤い」と言われたら「消防車」を連想する。

これが脳の自然な動きです。

それなのに、勉強する時だけ「これは膝の知識だから、膝フォルダへ」と無理やり分類しようとするから、脳にストレスがかかるのです。

臨床推論(クリニカルリーズニング)とは、知識の「検索」ではなく「連想」です。

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フォルダ分けという鎖で知識を縛り付けている限り、あなたの臨床推論はいつまでもスムーズになりません。

症例検討で毎回「ゼロ」から考えていませんか?

新人の症例レポートを見ていると、いつも思うことがあります。

担当患者さんが変わるたびに、解剖学書を引っ張り出し、同じような論文検索をしている……。

これは、過去の経験が「点」のまま放置されており、「線」として蓄積されていない証拠です。

  • 3年目のPTなら、3年分の臨床データが。
  • 10年目のPTなら、10年分の成功と失敗のデータが。

本来なら、それら全てが瞬時にアクセスできる状態でストックされていなければなりません。

過去の自分が今の自分を助けてくれる状態こそが、「熟練したPTの直感」の正体です。

この「直感」を、才能や経験年数に頼らず、システムとして構築するのが、これから紹介するObsidianの役割なのです。

理学療法士の最強の武器「Obsidian」とは何か

Obsidian(オブシディアン)とは一体何なのか。

公式サイトを見れば「ローカル保存のMarkdownエディタ」といった小難しい説明が並んでいますが、理学療法士はそんなIT用語を覚える必要はありません。

我々の得意分野である「脳機能」の視点で捉えると、その凄さが一瞬で理解できます。

「脳のシナプス」で理解するObsidian

Obsidianを一言で言えば、これです。

あなた専用の「Wikipedia」を作るツール

Wikipediaの記事には、青い文字(リンク)がありますよね?

クリックすると別の記事に飛ぶ、あの仕組みです。

Obsidianでは、テキストを書く時に [[ ]] (カッコ)で囲むだけで、知識同士が物理的に繋がります。

【Obsidianでのメモ例】

今日のAさん、立脚中期に [[Knee-in]] が見られた。 評価したところ、[[中殿筋]] の出力低下と、[[足部回内]] が影響しているようだ。

たったこれだけで、あなたのPC内に「Knee-in」「中殿筋」「足部回内」というページが作られ、リンクができます。

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これが何を意味するかわかりますか?

後日、別の患者Bさんのカルテで [[中殿筋]] と書いた瞬間、過去のAさんの記録も、解剖学の知識も、すべてが「関連情報」として一覧表示されるのです。

  • あなた: 「中殿筋」と書く
  • Obsidian: 「中殿筋といえば、以前Aさんでも問題になりましたよ!」「解剖学的にはここが重要ですよ!」

自分でも気づかなかった「知識の共通点」が、勝手に浮かび上がってくる。

これがObsidianが作る「思考のネットワーク化」です。

リンク思考 = 臨床推論そのもの

「リンクを繋げるなんて面倒…」と思いましたか?

実はこれ、私たちが毎日やっている「臨床推論」そのものなのです。

【臨床推論の頭の中】

  1. 現象: 膝が内側に入る(Knee-in)
  2. 連想: ↓↓↓(これがリンク!)
  3. 原因: 大殿筋? 足部? 股関節前捻角?

Obsidianを使えば、この脳内の連想ゲームを、画面上で再現できます。

自分の記憶力に頼る必要はありません。

リンクさえ繋いでおけば、Obsidianが「外部脳」として答えの候補を出してくれるのです。

可視化される脳みそ「グラフビュー」

Obsidianには、PTの心を揺さぶる最高の機能があります。

それが「グラフビュー」です。

これは、あなたの知識(点)とリンク(線)を、宇宙のような図にしてくれる機能です。

【グラフビューでわかること】
  • 知識の量: 点が増えれば増えるほど、星空のように広がる。
  • 得意分野: 「膝関節」の周りには星が密集している!
  • 苦手分野: 「呼吸器」の周りはスカスカだな…勉強しよう。

自分の「知識量」が一目でわかるのです。

毎日臨床に出て、疑問を調べ、リンクを繋いでいく。すると、自分の脳みそ(グラフ)がどんどん育っていく。

この快感は、他のノートアプリでは絶対に味わえません。

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Obsidianは「成長が目に見える」ツールなのです

私が実践する「Obsidian学習法」

では、具体的にどうノートを取ればいいのか。

私が長年かけて確立した、「臨床で戦うためのノート術」を公開します。

「フロー」を捨てて「ストック」しよう

X(Twitter)で流れてくる有益な情報、先輩との立ち話、学会での発表。

これらは全て「フロー情報(流れて消える情報)」です。

その場では「なるほど!」と思っても、3日後には忘れています。

Obsidianは、この情報を堰き止める「ダム」です。

どんな些細なことでも構いません。

たとえば、「先輩が言ってた、大腿骨転子部骨折の術後は内転筋のスパズムに注意」という一言を、即座にObsidianに放り込みます。

[[大腿骨転子部骨折]]  [[内転筋]] とリンクを貼るのです。

  • 今まで: 「いい話聞いたな」で終わる (消費)
  • これから: リンクを貼って一生残す (資産化)

数年後、転子部骨折の患者さんを担当した時、そのリンクがあなたを救うことになります。

臨床力を爆上げする「アトミック・ノート」術

Obsidianでノートを作る時、絶対にやってはいけないことがあります。

「教科書の丸写し」のような長文ページを絶対に作ってはいけません。

❌ 悪い例:タイトル「変形性膝関節症まとめ」

  • 疫学、病態、評価、治療……と、1万字くらい書いてある。
  • 結果: どこに何が書いてあるか探せない。他の疾患に応用できない。

Obsidianでは、情報を原子(アトミック)レベルまで細かく分解します。

これを「アトミック・ノート」と呼びます。

アトミックノートの作り方
  • 良い例:1テーマ1ページ
  • ページA:[[膝OAの疼痛メカニズム]]
  • ページB:[[膝OAに対する大殿筋トレーニング]]
  • ページC:[[膝OAの歩行特徴]]

なぜ細かく分けるの?

「再利用(レゴブロック化)」するためです。

例えば、「股関節OA」の患者さんが来たとします。

「膝OAまとめノート」は役に立ちませんが、「大殿筋トレーニング」というノートなら、股関節OAの治療メニューとしてもそのまま使えますよね?

知識をブロックのように小さく管理することで、どんな症例が来ても、ブロックを組み替えるだけで対応できるようになるのです。

GoodNotesやNotionは捨てなくていい!

ここで、多くの人が抱く疑問があります。

「GoodNotesや、Notionは捨てろってこと?」

たしかに、Obsidian以外にもノート管理アプリは多数存在しますが、それらすべてを使わなくていい、というわけではありません。

捨てなくていいし、使い続けて構いませんが、「役割」を変えましょう。

私は現在、この3つのツールを以下のように「適材適所」で使い分けています。

ツール役割使い方のイメージ
GoodNotes画用紙
(インプット)
「素材置き場」
手書きは最強です。図を描いたり、セミナー資料にメモする時に使います。書いたものは画像にしてObsidianに貼ります。
Notion事務室
(管理)
「タスク管理」
「いつ学会発表があるか」「どの論文を読むべきか」のリスト管理に使います。思考の整理には使いません。
Obsidian第2の脳
(思考)
「司令塔」
GoodNotesの画像も、Notionの文献知見も、最終的にここに集まります。思考し、リンクを繋げる場所です。

「全部Obsidianでやらなきゃ!」と思う必要はありません。

手書きはGoodNotes、管理はNotion、「思考」だけはObsidian

この住み分けが、最強の生産性を生み出します。

明日から始める「第2の脳」構築ロードマップ

ここまで読んで、「Obsidian、やってみたいかも」と思ってくれましたか?

最後に、明日から臨床を変えるための「最初の一歩」をお伝えします。

いきなり完璧なデータベースを作ろうとする必要はありません。

まずは小さく始めましょう。

完璧主義を捨てろ。まずは「ゴミ捨て場」でいい

多くの人が挫折するのは、「最初から綺麗に整理しようとする」からです。

断言しますが、最初は絶対にグチャグチャになります。

フォルダ分けなんて考えなくてOKです。

まずはObsidianをインストールし、保管庫(Vault)を1つ作ってください。

そこを「なんでもメモ帳」だと思って、日々の臨床で気づいたことを放り込んでいけばいいのです。

  • リンク[[ ]]さえつけておけば、後からいくらでも検索できます。
  • 情報が増えてきたら、勝手に繋がりが見えてくるのがObsidianの凄いところです。

整理整頓は、Obsidianがやってくれます。

あなたは「放り込む」だけでいいのです。

たった一つのルール。「わからない単語」をファイル名にする

「何を書けばいいかわからない…」 そんな人は、明日からこのたった一つのルールだけ実践してください。

「今日、臨床でわからなかった単語を1つだけ、ファイル名にする」

例えば、カルテを見ていて「誤嚥性肺炎」という言葉の意味が曖昧だったとします。

そうしたら、Obsidianで [[誤嚥性肺炎] という新規ページを作ってください。

中身は、ネットで調べた定義を1行書くだけでOKです。

[[誤嚥性肺炎]]は、細菌が唾液や食べ物などと一緒に誤嚥され、気管支や肺に入ることで発症する

これだけでいいんです。

これを1年続けたら、365個の「あなたの臨床に直結した知識」がストックされます。

そしてある日、[[嚥下機能]] [[炎症]] というページを作った瞬間、それらがリンクで繋がり、あなたのObsidianの中に、巨大な知識の島が出来上がっていることに気づくでしょう。

まとめ

日々業務に追われ、書類に追われ、勉強する時間は限られています。

だからこそ、その貴重な勉強時間を「消費」してはいけません。

ノートに書いて満足し、忘れてしまうのは「時間の浪費」です。

Obsidianに書き、リンクを繋ぐ行為は「投資」です。

今日書いたたった1行のメモは、複利のように膨れ上がり、数年後のあなたを助ける「一生モノの資産」になります。

「言いたいことはわかったけど、インストール方法も、設定も、よくわからない…」

安心してください。

次回の記事では、ITが苦手なPTのためだけに作った「Obsidian導入・完全ガイド」をお届けします。

  • 3分で終わるインストール手順
  • 私が実際に使っている「臨床用SOAPテンプレート」の配布
  • 最初に作るべき「推奨フォルダ構成」

これらを全てパッケージ化して用意しています。

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