「職務経歴書に書けるような、立派な実績なんて何もない……」「志望動機が思いつかなくて、ネットの例文をコピペしようか迷っている」
今、あなたがペンを止めて悩んでいるのは、能力が低いからではなく、自分のキャリアと真剣に向き合おうとしている証拠だからです。
しかし、転職市場の現実は少しシビアです。
「当たり障りのない例文」や、空欄を埋めただけの書類は、面接官はそれを一瞬で見抜いてしまいます。
そこには、あなたの「人柄」も「熱意」も載っていないからです。
私はこれまで現場の管理職として、多くの理学療法士の採用面接を行ってきました。
そこで見てきた「採用される人」に共通しているのは、輝かしい学会発表歴でも、難解な資格の数でもありません。
「目の前の患者さんのために、どれだけ悩み、考え、行動してきたか」 たったこれだけです。
この記事では、あなたが「何もない」と思っている日々の臨床経験を、採用担当者が「ぜひ会ってみたい」と思うような強みに変える方法をお伝えします。
読み終える頃には、「自分にも書ける!」という自信を持っているはずです。
あなたの本当の強みを、一緒に見つけに行きましょう。
理学療法士の転職で「書類選考に落ちる」理由と失敗する人の特徴

今の転職市場で何が起きているのか、少しだけシビアな現実をお話しさせてください。
これはあなたを不安にさせるためではありません。
「戦い方」さえ変えれば、実績がなくても十分に勝てることを知ってほしいからです。
なぜ、多くのPTが「真面目に臨床をやってきたはずだ」と思いながら、書類選考であっさりと落とされてしまうのでしょうか。
落ちる最大の理由は思考停止による「没個性」

あなたが書類選考で落ちる理由は、スキル不足でも経験不足でもありません。
提出した書類が「誰にでも書ける内容」であり、「思考の跡が見えない」からです。
面接官は、書類を見た瞬間に「この人は自分の頭で考えて仕事をしてきたか?」を判断します。
PTLab運営残念ながら、落ちる人の9割は、この「思考」の匂いが全くしないのです。
「資格=採用」の時代は完全に終わったから
なぜ「思考」がこれほどまでに問われるのでしょうか。
それは、理学療法士の市場価値が大きく変化したからです。
- 昔: 有資格者が少なく、免許があるだけで「金の卵」でした。
- 今: 養成校の乱立により、毎年1万人以上の新人があふれかえっています。
この飽和状態において、「理学療法士免許を持っています」「5年の経験があります」という事実は、もはやアピールになりません。
思考停止した書類では、その理由が見つからないのです。
面接官が「即不採用」にする2つの典型パターン


具体的にどのような書類が「思考停止」とみなされるのでしょうか。
私が実際に見て「これはダメだ」と判断する典型的な例を2つ挙げます。
- 「年数」しか誇らない人
- 「回復期病院で5年間の臨床経験があります。」(以上)
これだけでは、私たちはこう疑います。
「5年間、ただ漫然とルーチンワークを繰り返して歳をとっただけではないか?」
「1年目の経験を5回繰り返しただけの人ではないか?」
経験の中身が語られていない経歴書は、白紙と同じです。
- 「回復期病院で5年間の臨床経験があります。」(以上)
- 転職エージェントの「例文」をコピペする人
- 「貴院の地域医療への貢献に深く感銘を受け、私もその一員として……」
このフレーズを見た瞬間、面接官の思考はシャットダウンします。「またこのパターンか」と。
ネットやエージェントから借りてきた言葉は、綺麗ですが空虚です。
- 「貴院の地域医療への貢献に深く感銘を受け、私もその一員として……」



どこの病院にも出せる望動機は、「あなたの病院である必要はない」と言っているのと同じです。
選ばれるには「臨床推論」を見せるしかない


書類選考を突破するための唯一の解はこれです。
「事実(年数・資格)」を並べるのをやめ、「プロセス(思考・工夫)」を語ること。
臨床で患者さんを評価する時、なぜそうなったか?を考えますね? 転職活動も同じです。
「なぜその経験をしたのか?」「そこで何を考えたのか?」という「臨床推論」が文章から滲み出た時、初めてあなたは「その他大勢」から抜け出し、選ばれる理学療法士になります。
採用される「志望動機の書き方」と構成|PREP法で思考を整理しよう
「文章を書くのが苦手で、何から手をつければいいか分からない」 そんな悩みを持つあなたに朗報です。
採用される志望動機に、文才は必要ありません。
必要なのは「型(フレームワーク)」だけです。
ここでは、ビジネスの世界で標準とされ、私たち理学療法士も無意識に使っている「PREP(プレップ)法」を用いた書き方をお伝えします。
志望動機の最強フレームワーク「PREP法」とは?


PREP法とは、以下の4つの頭文字をとった構成の型です。
- P:Point(結論・要点)
- 内容: 「私は貴院で、〇〇(回復期・訪問など)の分野で貢献したいと考え志望しました」
- PT的思考: 最初にゴール(結論)を提示する。もったいぶらない。
- R:Reason(理由)
- 内容: 「なぜなら、前職で〇〇という課題を感じ、貴院の環境ならそれを解決できると考えたからです」
- PT的思考: 統合と解釈(なぜそのゴールを設定したのかの根拠)。
- E:Example(具体例・経験)
- 内容: 「実際に前職では、〇〇な患者様に対し、××という取り組みを行ってきました(苦労や工夫のエピソード)」
- PT的思考: S/O情報・評価結果(根拠を裏付ける客観的な事実)。
※ここが差別化のポイント!
- P:Point(再結論・まとめ)
- 内容: 「この経験を活かし、貴院の〇〇という課題解決に貢献することをお約束します」
- PT的思考: 治療プログラムの提案(だから、私を採用すべきだという締めくくり)。
これは、私たちが普段行っている医師への簡潔な報告」や「症例検討会での発表」と全く同じ構造です。
難しく考える必要はありません。
特別なスキルは不要。「E(具体例)」にはルーチン業務を入れる
多くの人が躓くのが、PREP法の「E(具体例)」です。
「書けるようなすごいエピソードがない」と悩む方が多いのですが、「E」を埋めるのに、学会発表の実績や、珍しい資格は一切必要ありません。
例えば、あなたが毎日行っている「移乗介助」や「カンファレンスでの発言」、「後輩へのちょっとしたアドバイス」。 その一つひとつに、あなたなりの「工夫」や「想い」があったはずです。
- ただの移乗介助
- →「患者さんの恐怖心を減らすために、声かけのタイミングを徹底した」
- 強み: リスク管理能力、患者心理への寄り添い
- ただの後輩指導
- →「感覚で教えるのではなく、手順書を作って共有した」
- 強み: 業務の標準化スキル、言語化能力
「なぜ、あの時そうしたのか?」 その理由を言語化し、「E(具体例)」として語ることこそが、最強の自己PRになります。



派手な実績よりも、地に足のついた日々の臨床思考こそが、面接官の心を強く動かします。
【例文あり】理学療法士の志望動機「NG例」と「OK例」のBefore/After


では、実際にどう書けばいいのか?
ここでは、多くの理学療法士が陥りがちな「残念な志望動機」を、先ほどのPREP法を使って「採用される志望動機」へと劇的に変化させてみましょう。
【NG例文】よくある「抽象的で伝わらない」志望動機パターン
- 【採用されない志望動機】
-
私はこれまで回復期病院で4年間勤務し、脳血管疾患の方を中心にリハビリを行ってきました。
しかし、病院の中だけでは退院後の生活まで支えきれないと感じることが多く、在宅分野に興味を持ちました。
貴ステーションは地域のリハビリに力を入れており、研修制度も充実していると伺いました。
未経験の分野ですが、一生懸命勉強して頑張りたいと思います。
よろしくお願いいたします。



面接官の心の声はこうでしょう
- 「興味を持ちました」→ 感想文か? 仕事は興味だけでは務まらない。
- 「研修制度も充実」→ 教えてもらうスタンスか……。
- 「一生懸命頑張ります」→ 具体的に何を? 精神論はいらない。
- 総評: 悪い人ではなさそうだが、あなたを雇うメリットが見えない。不採用。
改善の思考プロセス:自分の臨床経験を「価値」に変える3ステップ


では、このNG例をどうすれば救えるのでしょうか?
いきなり文章を書き直すのではなく、PREP法の素材を集めてみましょう。
- P(結論・目的):
- 何がしたい? → 「訪問リハで、利用者の在宅生活を安定させたい」
- R(理由・根拠):
- なぜこのステーション?
→ 「退院直後の集中介入(短時間通所など)に力を入れている点に共感したから」
- なぜこのステーション?
- E(具体例・経験): ※ここが最重要!
- 4年間で何に一番苦労した?
→ 「退院させた患者さんが、自宅で転倒して再入院してくるケースが悔しかった」 - そこで何をした?
→ 「退院前訪問に力を入れ、家屋環境を徹底的に評価した」 - 強み発見!
→ 「家屋環境評価スキル」+「再入院を防ぎたいという熱意」
- 4年間で何に一番苦労した?
- P(貢献):
- 結果どうなる?
→ 「私のリスク管理能力で、利用者さんの再入院率を下げられる」
- 結果どうなる?



思考の整理をすると、目的までたどり着きやすい!
これをPREP法に当てはめて文章化すると、こうなります。
- 採用される志望動機(PREP法)
-
【Point:結論】
私は、利用者様の「退院直後の生活」を支え、再入院を防ぐリハビリテーションを実践したいと考え、貴ステーションを志望いたしました。【Reason:理由】
回復期病院での4年間を通じ、真の自立支援には「生活の場」での環境調整と、退院直後のフォローが不可欠だと痛感したからです。【Example:具体例】
臨床現場では、病院で「できた」ADLが自宅では「できない」現実に直面し、転倒により再入院となるケースを目の当たりにしてきました。 その悔しさから、私は退院前訪問指導に注力し、ご家族への介助指導や家屋改修の提案を徹底して行ってきました。その結果、担当患者様の在宅定着率を向上させることができました。【Point:貢献】
貴ステーションは、退院直後の集中介入に強みを持っておられます。 そこに私の「回復期で培ったリスク管理」と「環境調整スキル」を組み合わせることで、利用者様の在宅生活の安定と、再入院予防に貢献できると確信しています。即戦力として、地域の方々のために全力を尽くします。
どうでしょうか? 書いている「事実(4年目の回復期経験)」はNG例と全く同じです。
「勉強させてください」ではなく、「私はあなたのステーションの課題(再入院予防)を解決できる戦力です」と宣言している点が、採用の決め手となります。
【職務経歴書の書き方】理学療法士が「自己PR」で実績を伝えるコツ


志望動機で熱意を伝えたら、次は「その熱意を裏付ける証拠」が必要で、それが職務経歴書です。
しかし、ほとんどの理学療法士が、職務経歴書を単なる「過去の所属リスト」として書いてしまっています。
はっきり言いますが、ただの年表に価値はありません。
私たち面接官は、あなたが「どこの病院にいたか」よりも、「そこで何をしてきたか」を知りたいのです。
ここでは、あなたの経歴書を「採用されるプレゼン資料」に変える3つの鉄則をお伝えします。
「カルテ」のように書く。事実+「工夫した点」
職務経歴書の「業務内容」欄に、以下のように書いていませんか?
- 脳血管疾患患者への理学療法
- 整形外科疾患患者への理学療法
- 計画書作成、カンファレンス参加
これでは、カルテの経過記録に「歩行訓練を実施した」とだけ書くのと同じです。
「どう実施したのか」が見えません。
必ず、あなたの「考察(工夫した点)」を付け加えてください。
- 脳血管疾患患者への理学療法
- 特に高次脳機能障害を持つ患者に対し、病棟看護師と連携したADL動作の定着に注力。
- 後輩指導
- 実技指導だけでなく、週1回の症例検討会を主催し、臨床推論の言語化をサポート。
一言添えるだけで、面接官は「この人はただ言われたことをやっていただけじゃないな」と感じます。
実績の数字は嘘をつかない。単位数・担当患者数を具体的に書く
「華々しい実績がない」と悩む人は、「数字」を味方にしましょう。
数字は客観的であり、誰が見ても評価が変わらない最強の共通言語です。
「多くの患者さんを担当しました」という曖昧な表現はやめて、以下のように数値化してください。
- 担当数: 年間約〇〇名の患者様を担当(脳血管〇%、運動器〇%)
- 稼働実績: 平均取得単位数 1日〇〇単位(病棟平均+1単位を維持)
- 成果: 担当患者の在宅復帰率 〇〇%(前年比+5%達成)
採用担当者は最初の5行しか読まない。要約力の重要性
職務経歴書の冒頭にある「職務要約」、ここが勝負の分かれ目です。
忙しい採用担当者は、何通もの書類に目を通します。
正直に言うと、最初の5行(職務要約)がつまらなければ、その下の詳細は読み流します。
この5行に、あなたのキャリアの「ハイライト」を凝縮してください。
【職務要約のテンプレート】
「〇〇病院(回復期・100床)にて5年間勤務。主に脳卒中患者様の在宅復帰支援に従事し、年間約200名のリハビリテーションを担当しました。 特に『退院後の生活を見据えた環境調整』に強みを持ち、多職種と連携して在宅復帰率の向上(80%→85%)に貢献しました。 貴院においても、この調整力を活かして地域連携の強化に貢献したいと考えております。」
これが書けていれば、面接官は「なるほど、こういう強みがある人ね」と理解した状態で、詳細を読み進めてくれます。



最初の5行で、あなたの価値を決定づける。 これを忘れないでください。
【面接対策】理学療法士の転職で「よくある質問」と「逆質問」の正解


書類選考は「足切り」に過ぎません。
面接こそが、あなたが「一緒に働きたい仲間」かどうかを見極める実技試験です。
失敗談や退職理由など「ネガティブな質問」への切り返し方


面接官は時々、こんな質問を投げかけます。



「前の職場の不満はなんでしたか?」
「臨床で一番大きな失敗は何ですか?」
これは、あなたの粗探しをしているのではありません。見ているのは以下の2点です。
- ストレス耐性: 嫌なことから逃げ出す癖がないか?
- 自責思考(他責にしない): トラブルの原因を他人のせいにしていないか?
このようなネガティブな質問には以下のように回答しましょう。
- そのまま: 「上司のパワハラがひどく、意見を聞いてもらえなかったので辞めました。」
- 面接官の印象: うちに来ても、また文句を言って辞めるだろうな。
- 変換後: 「前職ではトップダウンの指示系統が強く、チームでの議論が難しい環境でした。私はもっと多職種とフラットに連携し、患者様にとってベストな選択を議論できる環境で働きたいと考え、転職を決意しました。」
- 面接官の印象: なるほど、より良いリハビリを提供したいという前向きな理由だな。
ネガティブをポジティブに変換して、「そこから何を学び、どう改善して今に至るか」を語ってください。
それが成長力のアピールになります。
「逆質問」で差をつける。意欲を伝えるための質問リスト
面接の最後、「何か質問はありますか?」と聞かれた時、「特にありません」と答えるのは、「御院に興味がありません」と言っているのと同じです。
逆質問は、あなたの「入職後の働くイメージ」をアピールする最後のチャンスです。
以下のリストを参考に、必ず1〜2つは用意しておきましょう。
- 意欲を見せる: 「入職するまでに、準備しておくべき勉強や読んでおくべき書籍はありますか?」
- 具体性を問う: 「私が配属予定のチームが、現在抱えている一番の課題は何ですか?」
- 現場目線: 「1日の平均的な単位数や、カルテ記載の時間はどの程度確保されていますか?(※業務効率を気にしている視点)」



「私はすでに働く準備ができていますよ」という強力なメッセージになります


面接は第一印象でほぼ決まる
最後に、テクニック以前の基本の話です。
私たち理学療法士は、患者さんの第一印象から多くの情報を得ますよね?
面接官も同じです。
話す内容がどれほど立派でも、以下の「非言語コミュニケーション」が崩れていれば不採用です。
- 視線: 泳いでいないか? 相手の目を見て話しているか?
- 姿勢: 猫背になっていないか?
- 声のトーン: 患者さんに接する時のような、明るく落ち着いたトーンか?
面接を「テスト」だと思わず、「初めて担当する患者さん(=面接官)とのラポール形成の場」だと考えてください。
あなたが臨床で培った「傾聴力」や「接遇スキル」を発揮すれば、自然と良い印象を与えられるはずです。
まとめ
最後まで読んでいただき、ありがとうございます。
お伝えしたかったことはシンプルです。
「特別な実績がなくても、思考(臨床推論)のプロセスさえ見せれば、あなたは評価される」
転職活動は、決して「今の職場からの逃げ」ではありません。
これまでの臨床経験を振り返り、「自分は何ができるPTなのか」「将来どうなりたいのか」を深く考える、人生の棚卸しの時間です。
- 思考停止をやめる
- PREP法で論理的に構成する
- 日々の臨床業務を「価値」として語る
この3つを実践すれば、あなたの職務経歴書は「最強のプレゼン資料」になります。
そして、その思考プロセスは、転職先での臨床においても必ず役に立ちます。
これまで患者さんと向き合ってきたあなたの毎日は、決して無駄ではありません。
その経験を必要としている病院が、必ず待っています。







コメント