臨床に出て5年、新人時代とは違う種類の「焦り」を感じていませんか?

「このまま、この病院にいていいのか?」
「業務量と責任だけ増えて、給料は全く上がらない」
「同期はみんな転職してしまった」
そう感じて、ふと「転職サイト」を開いたあなたに、管理職を務める私から、残酷な現実をお伝えしなければなりません。
5年目の転職は、1年目の転職よりも「不採用」になるリスクが高く、失敗すれば「年収」が下がります。
多くの5年目PTが、「3年働いたから次はステップアップできる」と勘違いして転職市場に飛び込み、痛い目を見ています。
なぜなら、5年目のあなたにはもう「若さ(ポテンシャル)」という武器はなく、「実績(即戦力)」しか求められていないからです。
結論を言います。
「5年という年数」自体には、1円の価値もありません。
採用側が見ているのは、その5年間で「何を残したか(実績)」だけです。
この記事では、多くの5年目PTが陥る「市場価値の勘違い」と、キャリアの分岐点で後悔しないための「3つの生存戦略」を、採用側の裏事情を含めて徹底解説します。
- 転職すべきベストなタイミングとは「〇〇ができた年」
- 「とりあえず3年」で転職すると年収が下がるカラクリ
- 不採用になる5年目の共通点=「全介助で育ったPT」とは?
- 「一通りの業務ができる」を「最強の実績」に変える書き換え術
5年目は「何年目」がベストか?答えは「実績ができた年」だ



「理学療法士として転職するなら、何年目がベストですか?」
最もよく聞かれる質問です。
世間一般では「3年目」や「5年目」と言われますが、採用担当としての答えは一つです。
年数は関係ない。『語れる実績』ができた時がベストなタイミングだ
もしあなたが、ただ漫然と病院の業務をこなし、気づけば5年が経っていたとしたら、今のタイミングでの転職は避けるべきです。
なぜなら、5年目のあなたに対する評価基準は、新人の頃とは180度変わっているからです。
「5年目の評価基準」の真実


採用担当は、目の前の応募者が「何年目か」によって、評価スイッチを切り替えています。
この「スイッチ」の違いを理解せずに挑むと、面接で玉砕します。
- 1〜3年目の評価軸:【ポテンシャル(未来)】
- 技術は未熟で当たり前。
- 「素直さ」「元気の良さ」「学ぶ意欲」があれば採用します。
- 会社は教育コスト(赤字)を払ってでも、将来の成長に投資します。
- 5年目以降の評価軸:【コストパフォーマンス(過去)】
- 一通りの業務ができるのは当たり前(0点)。
- 「年収450万円払って、入職初日からそれ以上の利益(単位・組織運営)を出せるか?」のみを見ます。
- 教育コストはかけません。あなたが組織に利益をもたらす側(黒字)でなければなりません。
あなたはもう「学ぶ側(Taker)」ではなく、「与える側(Giver)」でなければならないからです。
「一通りの業務ができる」は、5年目では評価ゼロ



「リスク管理をして、一通りの疾患のリハビリを回せます」
「後輩の見守りもできます」
多くの5年目PTがこうアピールしますが、5年目なら「できて当たり前」です。
新卒なら加点対象になるスキルも、5年目にとっては「標準装備」に過ぎません。


前者は「時間の経過」を語っているだけですが、後者は「組織への貢献」を語っています。



あなたが今、「数字や変化で語れる実績」を持っていないなら、転職はまだ早すぎます。
「とりあえず3年」の呪い。中身のない5年は「1年目の繰り返し」に過ぎない
「石の上にも三年」と言いますが、何も考えずに過ごした3年〜5年は、キャリアにおいて猛毒です。
私はこれまで、「経験10年目ですが、中身は1年目を10回繰り返しただけ」という人を何人も見てきました。
「自分はベテランだ」と信じていますが、市場価値で見れば新人レベル。
「5年目」というラベルに価値はありません。
「私は5年間で、組織に対してどんな利益を生み出したか?」



この問いに即答できる準備ができた時こそが、あなたにとっての「ベストな転職タイミング」なのです。
「年収ダウン」する5年目PTの共通点



「5年も経験があるのだから、転職すれば年収は上がるはずだ(少なくとも維持はできるだろう)」
今すぐその認識を捨ててください。
残念ながら、5年目の転職は、戦略なしに動けば「年収ダウン」するのが一般的です。
なぜ、経験を積んだのに価値が下がるのか?
そこには、日本の医療業界特有の「給与のカラクリ」と、5年目特有の「慢心」が隠されています。
「経験年数」が増えれば「給料」が上がると勘違いしている


多くのPTが、今の給料を「自分の実力に対する対価」だと思っています。



しかし、それは大きな間違いです。
ほとんどの病院・施設には「俸給表(給与テーブル)」が存在します。
あなたが今の職場で昇給してきた分には、純粋な「経験加算」だけでなく、その組織に長く尽くしてくれたことへの「勤続給」が含まれています。
転職をするということは、この「勤続給」を自らドブに捨てることを意味します。
中途採用の給与計算は、多くの場合以下のように計算されます。
「新卒の初任給 + (経験年数 × 数千円)」
「前の職場では年収450万でした」と交渉しても、「うちは規定で400万が上限です」と一蹴されるのがオチです。
これが、「平社員から平社員への横滑り転職」で年収が下がる理由です。
「環境依存」で育った5年目は面接で見抜かれる


年収だけでなく、マインドセットでも失敗する人がいます。
私が面接をしていて最も「不採用」にしたくなるのが、「環境依存型」のPTです。
特に、教育体制の整った大病院出身者にこの傾向が強く見られます。
- 勉強会は病院が企画してくれるもの(自分で探さない)
- リハビリの指示は医師が完璧に出してくれるもの(自分で提案しない)
- 困ったら優秀な先輩が助けてくれるもの(自分で解決しない)
「ぬるま湯」に5年間浸かりきったPTが、中小病院や訪問看護ステーションに転職するとどうなるか。



「指示がないと動けない」
「教えてくれる人がいない」
とパニックになってしまいます。
採用担当は、履歴書や面接の端々から、あなたが「自走できる人」か「ぶら下がる人」かを見抜くことができます。
リハノメ 公式サイトはこちらもしあなたが、そもそも『どう勉強すればいいかわからない』というレベルで悩んでいるなら、転職の前にまずこの勉強法をマスターしてください。
「飽きた」を「成長したい」と言い換えるな


転職理由で「もっと勉強できる環境に行きたい」と言う5年目がいますが、これも危険信号です。
1年目が「勉強についていけない」と悩むのはわかります。
環境や教育体制が影響するからです。
しかし、5年目が「今の職場では学べない」と言うのは、「私は自分一人では学ぶ力も、環境を変える力もありません」と自己紹介しているようなものです。
5年目は、誰かに教えてもらう時期ではなく、後輩に教え、組織に知識を還元する時期です。
- 勉強会がないなら、自分が主催すればいい。
- 症例検討が足りないなら、自分が企画すればいい。
努力をせず、「環境が悪い」と他責にして転職する人は、次の職場でも必ず「ここは自分が成長できる場所じゃない」と言って3年で辞めます。



採用担当は、「他責思考」の5年目を最も警戒します。
5年目に限らず、理学療法士が転職で『失敗・後悔』するパターンには明確な法則があります。
失敗の地雷を全て把握しておきたい方は、こちらも必読です。
5年目から市場価値を上げる「3つのルート」


何も考えずに「規模が同じ病院の平社員」へ転職すれば、あなたの年収は下がり、キャリアは停滞します。
5年目のあなたが市場価値を上げ、生き残るために選ぶべき道は、以下の3つしかありません。
自分の適性と「何を得たいか(金か、地位か、やりがいか)」を天秤にかけ、覚悟を持って選んでください。
中小・立ち上げで「役職」を狙う
大組織の末端より、小組織のトップになれ。


これが、5年目が最短で年収と地位を上げる王道ルートです。
総合病院や大学病院では、上が詰まっていて「主任」になるのにあと10年かかるかもしれません。
しかし、新設の訪問看護ステーションや開業クリニック、中小規模の病院では、5年目の経験を持ち、教育や業務改善ができる人材は、喉から手が出るほど欲しい「幹部候補(リーダー)」なのです。
【インセンティブ・高待遇】訪問リハで「効率」を武器に稼ぐ
「年功序列を捨て、効率と訪問件数で稼ぐ」


「組織のしがらみよりも、とにかく年収を上げたい」という人には、このルートが最適です。
訪問リハビリの世界では、多くの事業所が「固定給+インセンティブ(件数連動型の手当)」を導入しています。
病院では1日15単位でも21単位でも給料は変わりませんが、訪問では「定めた件数を超えた分」がダイレクトに給与に上乗せされる仕組みが多いです。
病院よりも基本給の設定が高く、年収500万円以上がスタンダードな事業所も珍しくありません。



ここで活きるのが、5年目の「リスク管理能力」と「手際の良さ」です。
新人は一件一件に時間がかかり数を回せませんが、5年目のあなたなら、利用者さんの体調変化に素早く気づき、効率よく件数をこなすことができます。
【スペシャリスト】一時的な年収減を受け入れ「専門性」を買う
「損して得取れ。将来の第一人者を目指す投資」


もしあなたが「心臓リハビリを極めたい」「スポーツ分野に行きたい」という明確な夢があるなら、目先の年収は捨ててください。
特定の領域に特化した専門病院へ転職し、「認定理学療法士」や専門資格の取得を目指すルートです。
この場合、給与は下がる可能性が高いですが、それは「専門スキルを学ぶための授業料」と割り切ります。
認定理学療法士を目指す、あるいは特定領域を極めるなら、日々の学習の質を変える必要があります。
「リハノメ」なら、各分野のスペシャリストの講義が体系的に学べます。
5年目の「職務経歴書・面接」攻略テクニック
「5年も経験があるから、職務経歴書には書くことがたくさんある」 そう思って、担当した疾患名や勉強会の参加履歴を羅列していませんか?
残念ながら、それは「読まれない経歴書」の典型です。
「何を変えたか」と「どんな利益を出したか」にしか興味がないのです。
採用担当を唸らせる「職務経歴書」の書き換え術
5年目の職務経歴書は、定量的な「数字」で語ってください。



数字は嘘をつきませんし、あなたのビジネススキルを証明する最強のツールです。
埋もれる経歴書 vs 会いたくなる経歴書
以下の「Before/After」を見てください。
同じ5年目の経歴でも、書き方一つで印象が劇的に変わります。
【ケース1:後輩指導の経験】


【ケース2:臨床業務の経験】


嘘をつく必要はありません。
ですが、日々の業務を「数字」や「仕組み」に変換して翻訳する作業は必須です。
5年目の志望動機は「Give(貢献)」で語れ
志望動機で「不採用」になる5年目の口癖があります。



「御院の教育体制に惹かれ、勉強させていただきたいと思いました」
5年目の志望動機は、「Taker(奪う人)」ではなく「Giver(与える人)」のスタンスでなければなりません。





「学びたい」ではなく「貢献できる」
このマインドセットの切り替えが、採用・不採用の鍵です。
具体的な『自己PR』の書き方や、実績を魅力的に見せる文章術については、以下の完全ガイドで例文付きで解説しています。
面接での「逆質問」で市場価値を証明する
面接の最後、「何か質問はありますか?」と聞かれた時が、あなたの評価を上げるラストチャンスです。
ここで「残業はありますか?」「有給は取れますか?」と、待遇のことばかり聞くのはやめましょう。
5年目なら、視座の高さを示す逆質問を投げかけてください。


これらの質問は、「私は入職後の活躍を本気でイメージしています」というメッセージになります。



面接官と「対話(ディスカッション)」ができるレベルになれば、内定は向こうからやってきます。
これ以外にも、面接官の意図を見抜き、評価を上げる『逆質問』のリストを用意しています。面接前に必ずチェックしてください.
5年目が使うべき転職サービスとタイミング


「学生時代に使った『マイナビ』や『PTOT人材バンク』を、今回もなんとなく使おうとしていませんか?」
その思考停止が、あなたの年収を下げる原因です。
はっきり言いますが、1〜2年目の新人と同じ転職サイトを使っていては、5年目の価値ある求人(管理職・高待遇)には巡り会えません。
あなたはもう「守られるべき学生」ではなく、「高く売れるプロ」なのです。



使う転職サービスも、5年目(経験者)仕様に変える必要があります。
新卒と同じ「転職サイト」を使ってはいけない理由
1〜2年目と5年目では、転職エージェントに求めるべき機能が180度違います。
この違いを理解せずに登録すると、あなたのキャリアは「その他大勢」に埋もれてしまいます。


新卒向けのサイトで探しても、出てくるのは「誰でもウェルカム」の求人ばかりです。
5年目のあなたは、「ハイクラス求人」や「管理職案件」を保有している転職エージェントを選び、担当者をビジネスパートナーとして使い倒さなければなりません。
エージェントは「交渉人」。使い倒すための3つの心得
5年目の転職活動では、エージェントに対して「いい求人ありますか?」と受け身で聞いてはいけません。
以下のスタンスで、担当者の力量を見極め、主導権を握ってください。
① 最初の面談で「市場価値」を値踏みさせる
登録直後の面談で、単刀直入に聞いてください。
「私のこの5年の経歴(リーダー経験・臨床実績)だと、このエリアでの年収相場はいくらですか?」
あなたの価値を正当に評価できないからです。
② 「平社員」の求人を断る勇気を持つ
「人手が足りていない現場」を数打ちゃ当たるで紹介されることがあります。
しかし、あなたはもう「頭数合わせ」の人材ではありません。
「今の自分より上のポジション(主任候補・立ち上げなど)か、年収〇〇万以上の案件しか見ません」 と条件を明確に伝えましょう。
③ 給与交渉を「丸投げ」する
これが5年目の特権であり、エージェントを使う最大のメリットです。
自分で「給料を上げてください」と言うのは角が立ちますが、エージェントには「年収450万以上でなければ面接に行かない」と強気で伝えて構いません。
今すぐ動くべきか?「ステイ(残留)」の判断基準
最後に、転職のタイミングについてです。
以下の基準で判断してください。


採用担当の視点から見た『優秀なエージェントの見分け方』や、裏側にある『採用コスト』の仕組みを知れば、交渉はさらに有利になります。
まとめ
- 5年目という「年数」だけでは価値がないこと。
- 「なんとなく」の転職は年収を下げること。
- しかし、「実績」さえあれば、5年目は最強の売り手になれること。
5年目は、理学療法士としての「新人編」が終わり、「プロフェッショナル編」が始まるタイミングです。
ここからのキャリアは、誰かが用意してくれたレールではなく、あなた自身が戦略を持って切り拓く獣道です。
- 自分の5年間を言語化してみる。
- 書くことがなければ、明日から今の職場で「実績作り」を始める。
- 書くことがあれば、「転職エージェント」に登録し、自分の市場価値を診断してもらう。
動くも戦略、留まるも戦略。
今のあなたには、それを選ぶだけの力が備わっているはずです。









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