勉強熱心なあなたに、一つだけ質問をさせてください。
PTLab運営あなたが1年前に書いたそのノート、今この瞬間の臨床で役に立っていますか?
もし、即座に「YES」と答えられないなら……残念ながら、あなたのノートは単なる「知識の墓場」になっている可能性が高いです。
断言しますが、 書いたことを見返さず、必要な時に「秒」で取り出せない情報は、勉強していないのと同じです。
私自身、新人時代は膨大な量のノートを作りました。
しかし、現場で患者さんを前にすると頭が真っ白になり、何も思い出せない……そんな悔しい経験を何度もしました。
知識が頭に入っていないのではありません。 知識を引き出すための「回路」がなかったのです。
この記事では、Obsidianをさらに拡張させるための2つのプラグイン(CalendarとTemplater)を組み合わせ、私の「臨床思考」をあなたのPCにインストールする方法を伝授します。
- 思考停止でOK
- ボタン一つで「書くべき項目」が自動生成されます。構成に悩む時間はゼロになります。
- 三日坊主を防止
- カレンダーをクリックするだけ。その「0.1秒」のアクションが学習スイッチになります。
- 未来への投資
- 今日の何気ないメモが、1年後に「最強の教科書」としてあなたを助けてくれます。
やることは単純です。 私が配布するコードをコピペして、明日からボタンを押すだけ。
たったそれだけの作業で、あなたのノートは「書き捨てのメモ帳」から、一生モノの「臨床パートナー」へと生まれ変わります。
この記事はObsidian導入済みの方に向けた実践編です。
まだインストールしていない方は、まず以下の記事で初期設定(3分で終わります)を済ませてから戻ってきてください。


なぜ、あなたのノートは「書き捨て」で終わるのか?


一生懸命書いたレポートや、勉強会の資料を「一度でも」読み返したことがありますか?
おそらく、PCの奥深くにあるフォルダに眠ったまま、二度と開かれることはないでしょう。
それは、あなたの勉強が足りないからではなく、情報の「保存方法」が間違っているからです。



具体的な解決方法をご紹介します
目指すべきゴールは「1年後に“答え”が自動で出てくる」状態
私たちが目指すのは、単なる記録ではありません。
「臨床で困ったその瞬間に、過去の自分が答えを教えてくれる」状態を目指すことが重要です。


たとえば、あなたが担当した患者さんが「大腿骨頸部骨折」で、痛みが強く難渋していたとします。
【普通のPTの場合】
教科書を開き、「頸部骨折のリハビリ」という一般的な知識を読み直します。
そこには「あなたの患者さん」に特化した答えはありません。
【Obsidianを使っているPTの場合】
Obsidianで[[大腿骨頸部骨折]]と検索します。すると、
- 過去に自分が担当した「5人の頸部骨折患者」の記録
- その時に調べた「文献の要約」
- 先輩から教わった「疼痛緩和の裏技」
- 以前失敗した「やってはいけない禁忌」
これらが、時系列でズラッと並んで表示されるのです。



あ、この痛みのパターン、半年前の◯◯さんと同じだ!
あの時はこのポジショニングで良くなったんだ!
Obsidianを使えば、新人でもこの「ベテランの脳みそ」を人工的に再現することができるのです。
「第2の脳」を作るたった一つの条件は「リンク」である


なぜWordや紙のノートでは、これができないのでしょうか?
答えは単純で、「情報がつながっていない(リンクしていない)から」です 。



情報をつなぐってどういうこと?
人間の脳は、情報をフォルダ分けしていません。
「りんご」と言われたら「赤い」「甘い」「青森」と連想するように、情報は「つながり」があって初めて生きた知識になります 。
- 普通のノート:ページが独立している(孤立した情報)。
- Obsidian:ページ同士がリンクしている(ネットワーク化された情報)。
新人が「仕組み」に頼るべき理由



「なるほど。じゃあ意識してリンクを貼ろう」
そう思ったあなたは、100%挫折します。
なぜなら、臨床現場は戦場だからです。
日々の業務、書類作成、先輩への報告……、脳がパンパンの状態で、「高度なリンク付け」なんて考える余裕はありません 。
新人のうちは、「意志力」に頼ってはいけません。



意志力ではなく、「仕組み」に頼るのです 。


この仕組みを構築するのが、CalendarとTemplaterという2つのプラグインです。
- いつ書くか? → 「Calendar」が教えてくれる。
- どう書くか? → 「Templater」が教えてくれる。
これから紹介する2つのプラグインを入れる理由は、ただ一つ。
「あなたが何も考えなくても、勝手にリンクが繋がり、勝手に第2の脳が育つ環境」を強制的に作るためです。



その最強の環境を、たった3分で構築しましょう。
「第2の脳」を勝手に育てる2つの仕掛け(Calendar × Templater)


「仕組み化」といっても、難しいプログラミングをするわけではありません。
必要なのは、Obsidianの数あるプラグインの中から、以下の「2つ」だけを導入することです。
これらは、あなたの脳の「弱点」を補うために存在します。
1. 【継続の自動化】Calendarプラグイン
役割:勉強の「起動スイッチ」



勉強が続かない最大の理由は「意志が弱いから」ではなく、「始めるまでの手数が多いから」です。
ノートアプリを開き、新規作成ボタンを押し、日付を入力して、タイトルを考える……この数秒の手間が、脳にとって最大のブレーキになります。
- 導入前:「今日は疲れたし、ノートを開くのが面倒だな……」
- 導入後:画面右のカレンダーの「今日の日付」をクリックするだけ。
2. 【思考の自動化】Templaterプラグイン
役割:思考の「矯正ギプス」
真っ白な画面に向かうと、脳は「どう書こうかな?」と構成を考えることにエネルギーを使ってしまいます。
これは臨床思考の無駄遣いです。
Templaterを使えば、ボタン一つで「ベテランの思考回路」が呼び出されます。
- 導入前:事実の羅列や、ただの感想文になってしまう。
- 導入後:**「仮説は?」「リスクは?」「次のアクションは?」**という問いが自動生成される。
あなたは、その穴埋めをするだけで、自然と「リンク付きのデータ」が完成し、検索に引っかかるようになります。
【3分で完了】最強のノート環境セットアップ手順
それでは、実際に環境を作っていきましょう。
PC操作が苦手でも、以下の手順通りに、マウスを動かすだけで簡単に終わります。
基本的な日本語化や、画面の見方がわからない場合は、先に基礎編を確認しておくとスムーズです。


Step 0:コミュニティプラグインを「ON」にする
まず、拡張機能を使える状態にします。
セキュリティの設定を変更するだけです。
- 左下の 歯車アイコン(設定) をクリック。
- 左メニューの [コミュニティプラグイン] を選択。
- 「コミュニティプラグインを有効化」 というボタンをクリック。


これで準備完了です。
Step 1:Calendar導入
画面右側にカレンダーを表示し、クリックした日付のノートを瞬時に作成できる機能です。
毎日の臨床日誌や、学習記録をつけるのに必須です。




Step 2:「99_Templates」を作る
次に、テンプレート(型紙)をしまっておく「倉庫」を作ります。
これをしておかないと、大事なテンプレートが他のノートと混ざって行方不明になります。
- Obsidianの画面左上にある 「新規フォルダを作成」アイコン(フォルダに+がついたマーク)をクリックします。
- フォルダ名を 99_Templates と入力してEnterキーを押します。
頭に「99」とつけたのは、フォルダ一覧の一番下に表示させて邪魔にならないようにするためです。
Step 3:Templaterの導入&設定
「SOAPの型」や「疾患まとめの型」を登録しておき、一瞬で呼び出すためのツールです。




最後に、Obsidianに「ここがテンプレートの置き場所だよ」と教えてあげます。
これで設定は完了しました。
次は、いよいよ「私が構築した思考回路」をお伝えします。
【コピペOK】15年目の臨床思考を完全コピーする「魔法のコード」
以下のコードブロックの中身をすべてコピーし、Obsidianの新規ノートに貼り付けてください。
そして、そのノートのタイトルを 臨床思考テンプレートとして、先ほど作った 99_Templates フォルダに保存してください。
# <% tp.date.now("YYYY-MM-DD") %>_臨床記録
## 1. 患者情報・主訴 (Subjective)
- **患者ID/イニシャル**:
- **主訴(患者の言葉で)**:
- **Tags**: #臨床/症例 #疾患/[[ ]]
## 2. 初期仮説 (Hypothesis)
> [!QUESTION] 評価の前に考えろ
> 患者に触れる前に、最も疑わしい原因(第1仮説)と、見逃してはいけないリスク(Red Flag)は何か?
- **第1仮説(本命)**: [[ ]]
- **第2仮説(対抗・鑑別)**: [[ ]]
- **リスク管理(SINSS)**:
## 3. 評価と検証 (Objective)
- **仮説を検証するためのテスト**:
- [ ]
- **主な所見**:
-
## 4. 統合と解釈 (Assessment)
> [!INFO] 思考の言語化
> 「痛かった」という事実ではなく、「なぜ痛いのか?」「その機能障害はどのADLを阻害しているか?」を記述せよ。
- **機能診断**:
- **考察**:
## 5. Next Action (Plan)
- **明日の臨床で確認すること**:
- [ ]
- **調べたい知識・文献**:
- [[ ]]
仕掛けの解説①:「問い」が思考プロセスを矯正する
このテンプレートには、「評価(O)」の前に「仮説(H)」を書く欄を設けています。
新人の多くは、患者さんが来たらすぐに触ったり、とりあえずROMを測ったりします。
これは間違いです。
熟達したセラピストは、「触る前に予測する」ことを無意識に行っています。
- 普通のノート:「ROM測定の結果、屈曲100°だった」と書く。
- このテンプレート:「第1仮説は滑液包炎だ。だからROM制限があるはずだ」と予測してから測る。
仕掛けの解説②:[[リンク]] が未来の自分への手紙になる
コードの中に、あらかじめ [[ ]] というカッコが含まれていることに気づきましたか?
これが、「第2の脳」を育てるための種です。
#疾患/[[ ]]第1仮説:[[ ]]調べたい知識:[[ ]]
たとえば、[[大腿骨頸部骨折]][[深層外旋六筋]] と入力するだけで、Obsidianは裏側でリンクを構築します。
もし、その用語のページがまだ存在しなくても構いません(色が薄く表示されるだけです)。
重要なのは、「いつか同じキーワードを使った時、今日のこのノートが自動的に呼び出される状態にしておく」ことです。



ただカッコの中を埋めるだけで、自動的にリンクが完成します。
【実践】明日から回す「1分間ルーティン」の具体的フロー
準備はすべて整いました。
明日から、あなたがやるべきことは以下の「3ステップ」だけです。
たった5分で構いません。
この手順を習慣化することで、臨床で使えるノートが出来上がります。
Action 1:カレンダーを「クリック」する(1秒)
Obsidianを起動したら、画面左側のカレンダーから「今日の日付」をクリックしてください。
何が起きる?
202X-XX-XXというタイトルの、真っ白なノートが一瞬で作成されます。- フォルダ分けやファイル名を考える必要はありません。
Action 2:テンプレートを「呼び出す」(1秒)
白紙のノートが開いたら、ショートカットキー Alt + E を押してください。(Macの方は Option + E)
すると、登録されているテンプレートの一覧が表示されるので、先ほど作った 臨床思考テンプレート を選択してEnterを押します。
何が起きる?
- 一瞬にして、先ほどの「思考回路」が画面に展開されます。
- 「何を書こうかな……」と悩む時間は、これでゼロになります。
Action 3:問いに「答える」(3分)
カーソルに合わせて空欄を埋めていくだけです。
- 文章をきれいに書こうとしないでください。自分だけが読めるメモ書きで十分です。
- 疾患名や症状が出てきたら、必ず
[[ ]]で囲ってください。(例:[[変形性膝関節症]])



平日はここまででOK!



え?これだけでいいの?
平日は「素材集め」の時間です。深く考えず、思考のログを残すことだけに集中してください。
【週末の魔法】「書きっぱなし」を「最強の教科書」に変える15分


ここからが、「PTラボ流」の真髄です。
毎日書いたノート(Daily Note)は、あくまでも「原石」に過ぎません。
そのままにしておくと、情報は埋もれてしまいます。
週末に15分だけ時間を取り、原石を磨くことで「宝石」にする作業を行います。
Step 1:今週のノートをパラパラ読み返す
カレンダーを見ながら、今週書いた5日分のノートをざっと見返します。
ほとんどは「愚痴」や「事務連絡」かもしれませんが、それは無視してOKです。



「あ、この患者さん、膝蓋骨を動かしたら痛みが減ったな」
このような「キラリと光る気づき」が必ずあるはずです。
Step 2:リンク先に「一行」だけ追記する
その気づきがあった箇所のリンク、例えば [[変形性膝関節症]]をクリックしてください。
すると、新しいページ(変形性膝関節症のページ)が開きます。
そこに、今週得た「教訓」を一行だけ書き足します。
・膝蓋骨の可動性が低下すると、内側部痛が増悪するケースがあった(202X-12-XXの症例)
これを繰り返すと、何が起きるか?
これを毎週繰り返していくと、あなたのObsidianの中にある [[変形性膝関節症]] のページは、教科書のコピーではなく、「あなたの臨床経験が凝縮された攻略本」へと育っていきます。
- 平日:テンプレートで「点」を打つ(Daily Note)
- 週末:リンク機能で「線」をつなぐ(Wiki)
このサイクルこそが、「第2の脳」を作るエンジンの正体です。
まとめ:1年後、あなたのPCは「世界最強の臨床パートナー」になる
この習慣を1年、いや3年続けた先には、どんな景色が待っているでしょうか?
ある日、あなたは難渋する患者さんを担当し、壁にぶつかります。
そこで、Obsidianを開き、キーワード検索をします。
検索結果に表示されるのは、「過去のあなた」が、今のあなたを助けるために残したメッセージがズラッと並びます。



「1年前の自分も同じことで悩んでるな……でも、この文献を読んで解決してる!」
「このアプローチは失敗したって書いてある。じゃあ別の方法を試そう」
「自分の経験を検索できる」
これこそが、AIにも競合にも真似できない、あなただけの最強の武器です。
3年も続ければ、あなたのObsidianは市販のどの参考書よりも詳しい、「あなた専用の臨床Wikipedia」に育っているはずです。
- Calendar を入れて、スイッチを作る。
- Templater を入れて、思考の型をコピペする。
- 明日の臨床が終わったら、「日付をクリック」して「Alt + E」を押す。
たったこれだけの「仕組み」を導入するかどうか。
それが、1年後に「感覚だけで治療するPT」になるか、「論理と経験で治療するPT」になるかの分かれ道です。
今すぐObsidianを開いて、最初の設定を済ませてしまいましょう。








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