理学療法士として働き始めると、勉強メモは少しずつ増えていきます。
紙のノート、スマホメモ、勉強会の資料。
最初のうちはそれで回っていても、しばらくすると次のようなことが出てきます。
- 前に調べたはずの内容が見つからない
- 勉強会のメモが残っているだけで、臨床に活かせていない
- 疾患別にまとめたノートが、目の前の患者さんとつながらない
- スマホメモ、iPad、Notion、Obsidian……どれを使えばいいか分からない
こうした悩みが出てきたとき、Obsidianは選択肢の一つになります。
ただし、すべての人にいま必要なアプリというわけではありません。
紙メモやスマホメモで「今日の疑問」を1つ残せているなら、それだけでも立派な勉強です。
この記事では、Obsidianがどんなアプリなのか、どんな段階で役に立つのか、臨床メモとして使うときに何を残せばよいのかを整理します。
- Obsidianがどんなノートアプリなのか
- 理学療法士の勉強にObsidianが向いている場面
- 紙メモ、スマホメモ、iPad、Obsidianの使い分け
- Obsidianに残すとよい臨床メモの型
- 患者情報を扱うときの注意点
- 初期設定やZettelkasten記事へ進むタイミング
理学療法士の勉強アプリにObsidianは使える?

結論から言えば、Obsidianは理学療法士の勉強に使えるアプリです。
ただし、使い方によって「合う段階」と「まだ早い段階」があります。
Obsidianは、メモ同士をリンクできるノートアプリ
Obsidianは、Markdown形式でメモを書き、メモ同士をリンクでつなげられるノートアプリです。
理学療法士の勉強で考えると、次のように理解するのが分かりやすいです。
過去に書いたメモ同士をつなげて、あとから探し直しやすくするアプリ。
普通のノートアプリでは、メモをタイトルやフォルダで探します。
Obsidianでは、それに加えて [[歩行評価]]、[[中殿筋]]、[[立脚期]] のように、関連する言葉をリンクとして残せます。
たとえば、歩行評価のメモに [[立脚期]] と書いておけば、あとから立脚期に関するメモをまとめてたどれます。
臨床に置き換えると分かりやすいかもしれません。
患者さんの歩行を見るとき、「膝だけ」「股関節だけ」で考えているわけではなく、筋力、疼痛、足部の接地、バランスなどを行き来しながら判断しています。
PTLab運営Obsidianは、思考の行き来をノート上でもやりやすくする道具です。
紙メモやスマホメモと何が違うのか
紙メモやスマホメモの強みは、すぐに書けることです。
臨床中に浮かんだ疑問を残す、帰宅後に1行だけメモする。
こうした使い方なら、Obsidianより紙やスマホのほうが手軽なこともあります。
ただ、メモが増えてくると次のような問題が出てきます。
- どこに書いたか思い出せない
- 疾患別にまとめたメモが、動作の話とつながらない
- 似た内容のメモが別々の場所に散らばっている
- 前の症例で学んだことを次の症例に活かしにくい
こうなったとき、Obsidianのリンク機能が役に立ちます。
疾患名だけでなく、動作、評価、症状、介入目的からも過去のメモへ戻れるようになるからです。
最初から全員に必要なわけではない


新人PTの最初の課題は、ツールを整えることではありません。
目の前の患者さんで何に困っているかを、言葉にすることです。
この段階なら、紙メモやスマホメモで十分です。
- 今日の疑問を1つ残す
- 明日の臨床で見ることを1つ決める
- 先輩に聞く質問を1つ作る
Obsidianを検討するのは、次のような状態になってからでも遅くありません。
- メモが増えてきて、探すのに時間がかかる
- 疾患別ノートだけでは臨床場面とつながりにくい
- 勉強ノートを長く使える形で残したくなってきた
まずは小さくメモを残す。メモが増えてきたら、Obsidianを試してみる。
この順番のほうが、無理なく続けやすくなります。
Obsidianが向いているPT・向いていないPT


Obsidianが便利に感じるかどうかは、今の勉強の段階によって変わります。
ここでは、向いている人・まだ早い人の特徴と、迷ったときの判断基準を整理します。
Obsidianが向いている人
Obsidianが向いているのは、メモをただ保存するだけでなく、あとから探し直して再利用したい人です。
たとえば、次のような状態に心当たりがあれば、試してみる価値があります。
- 勉強ノートが増えてきた
- 前に調べたことを探すのに時間がかかる
- 疾患、評価、動作、介入をつなげて考えたい
- 紙やスマホメモでは散らかってきたと感じる



若手PTの勉強を見ていると、知識がないというより、知識を取り出す場所が決まっていないために苦しくなっている人がいます。
勉強会のメモ、参考書のメモ、先輩に聞いたこと、症例で困ったこと。
Obsidianは、散らばったメモを少しずつリンクでつなげていくための道具として使えます。
Obsidianがまだ早い人
一方で、次のような段階なら、先に紙やスマホメモで始めるほうが合っています。
- まだ勉強習慣が安定していない
- 毎日メモを残すだけで精一杯
- 何を勉強すればよいか迷っている
- ツールの設定で疲れてしまうことが多い
勉強アプリを整えることと、勉強することは別の作業です。
まずは、今日の患者さんで困ったことを1つ残す。そこができてから、必要に応じてObsidianを使えば十分です。
何から勉強すればよいか迷っている場合は、先に優先順位を整理しておくと進めやすくなります。


判断に迷うなら、メモの量で考える


自分にObsidianが必要かどうか迷ったら、アプリの機能ではなく「メモの量」で判断するのが一番シンプルです。
まだメモが少ないなら、無理に移行する必要はありません。
紙やスマホメモで、次の3つを残すだけでも十分です。
- 今日の疑問
- 学んだこと
- 明日見ること
メモが少ないうちはシンプルに。増えてきたら、リンクで探し直せる仕組みへ。
この考え方を持っておくと、ツール選びで迷いにくくなります。
理学療法士がObsidianでできること


Obsidianには多くの機能がありますが、理学療法士の勉強で最初から覚えるべきものは限られています。
- メモを書く
- メモ同士をリンクする
- 過去のメモを検索して見返す
この3つが使えれば、最初のObsidian運用としては十分です。
それぞれ、臨床場面での使い方を具体的に見ていきます。
臨床の疑問を短く残す
Obsidianで最初にやることは、整った知識データベースを作ることではありません。
今日の臨床で出てきた疑問を、短く残すことです。
たとえば、次のようなメモで十分です。
立脚期に膝折れが出る人で、どこを最初に見るか。
関連: [[立脚期]] [[膝折れ]] [[大腿四頭筋]] [[疼痛]]
これだけでも、あとから 膝折れ や 立脚期 で検索したときに、このメモへ戻れます。
大切なのは、患者さんの詳細情報を残すことではなく、自分がつまずいた臨床の現象を、個人が特定されない形で書くことです。
関連する評価・動作・疾患をリンクする
Obsidianの特徴は、メモ同士をリンクでつなげられることです。
たとえば、歩行に関するメモなら次のように残せます。
歩行中に立脚期の不安定さがある。
確認したいこと: [[疼痛]] [[筋力]] [[荷重量]] [[バランス]] [[歩行補助具]]
こうしておくと、あとから別のメモを書いたときに、同じキーワードを通して関連する内容にたどり着けます。
疾患別に閉じたノートではなく、臨床場面から横に広がるノートにしやすい。これがObsidianを勉強に使う大きな利点です。
グラフビューは、振り返りに使う程度でよい
Obsidianには、メモ同士のつながりを図で見られるグラフビューという機能があります。
グラフビューとは視覚的に面白く、知識が広がっていく感覚を得やすい機能です。
ただ、グラフビューを眺めること自体が目的になると、勉強の時間がそちらに流れてしまいます。
新人PTが大切にしたいのは、グラフをきれいにすることではなく、明日の評価・介入・記録・相談に使えるメモを残すことです。
グラフビューは、メモが増えてきたときに「自分はどんなテーマをよく学んでいるか」を確認する程度で十分です。
Obsidianに残すとよい臨床メモの型


Obsidianを使うときも、残す内容は難しく考えなくて大丈夫です。
勉強ノート術の記事でも紹介した、次の型がそのまま使えます。
- 今日の疑問
- 学んだこと
- 明日見ること
この3つを短く残すだけで、臨床に戻しやすいメモになります。
今日の疑問を1つ残す
最初に残すのは、今日の臨床で浮かんだ疑問です。
ポイントは、大きなテーマではなく、具体的な場面に絞ることです。
「歩行について勉強する」
これでは広すぎて何を調べればよいか分かりません。
次のように場面を絞ると、調べる方向が定まります。
立脚期に膝折れが出る人で、最初に確認する評価は何か。
このくらい小さくしておくと、動画、参考書、先輩への質問にもつなげやすくなります。
Obsidianに残す場合は、関連する言葉をリンクにしておきます。
立脚期に膝折れが出る人で、最初に確認する評価は何か。
関連: [[立脚期]] [[膝折れ]] [[疼痛]] [[筋力]]
学んだことは一文で残す
調べた内容や先輩に教わった内容は、一文にまとめて残します。
教科書の丸写しをすると、ノートはすぐに重くなります。
大切なのは、自分の臨床で使う言葉に置き換えることです。
たとえば、次のように書きます。
膝折れを見るときは、筋力だけでなく、疼痛、荷重量、疲労感も一緒に確認する。
詳しい理論や文献をまとめたい場合は、別のメモにしてリンクすれば大丈夫です。



最初のメモは、短くても「使える一文」にすることを優先してください。
明日見ることを1つ決める
最後に、明日の臨床で見ることを1つだけ決めて残します。
次のように、行動に変えておくのがポイントです。
- 明日は歩行前に疼痛の部位とNRSを確認する。
- 立脚期で膝折れが出るタイミングを見る。
この1行があるだけで、翌日の最初の一歩が具体的になります。
Obsidianに残すなら、[[明日見ること]] や [[歩行評価]] とリンクしておくと、あとから似たメモをまとめて振り返れます。
紙・スマホメモ・iPad・Obsidianは目的で使い分ける


Obsidianを使い始めると、すべてをObsidianに集約したくなります。
しかし、すべてを1つのアプリにまとめる必要はありません。
| ツール | 向いている使い方 | 注意点 |
|---|---|---|
| 紙メモ | 臨床中の一時メモ、忘れないための走り書き | 紛失や個人情報の扱いに注意する |
| スマホメモ | 今日の疑問、明日見ることを短く残す | 患者情報やカルテ内容を入れない |
| iPad / GoodNotes | 図、手書き、資料への書き込み | きれいなノート作りが目的になりやすい |
| Notion | タスク管理、読みたい資料リスト、進捗管理 | 臨床メモのリンク管理には工夫が必要 |
| Obsidian | 増えてきたメモの検索、リンク、知識の接続 | 最初から複雑に作ると挫折しやすい |
紙メモは現場の一時置き場
臨床中に、きれいなノートを作っている時間はありません。
その場で必要なのは、あとで思い出すための走り書きです。
- 立脚期の膝折れ
- 離床前のSpO2確認
- 疼痛で荷重が逃げる
- 記録に介入目的を書く
これくらいの粒度で十分です。
スマホメモは短い疑問に向いている
スマホメモは、帰宅後や休憩中にその日の疑問を短く残すのに向いています。
スマホメモに残すなら、次のような形が安全です。
- 今日の疑問: 立脚期に膝折れが出るとき、最初に何を見るか。
- 明日見ること: 疼痛、疲労感、膝折れのタイミング。
患者さん個人の情報を含まず、臨床の「現象」だけを残す形にしておけば問題ありません。
Obsidianは増えてきたメモをつなぐ場所
Obsidianは、現場で急いで書くアプリというより、増えてきたメモをあとから整理し、つなげる場所として使うのが合っています。
たとえば、
- 紙メモやスマホメモに残した疑問のうち、あとからも見返したいものだけを帰宅後や週末にObsidianへ移す。
- そのときに、関連する言葉をリンクにしておく。



このくらいの運用で十分です。
最初からすべてのメモをObsidianに入れようとすると、負担が大きくなります。
「何度も見返したい疑問だけをObsidianに残す」くらいの感覚から始めてみてください
Obsidianを使うときの注意点


Obsidianは便利な道具ですが、使い方によっては勉強の目的から離れてしまうこともあります。
特に新人PTは、次の3つに注意してください。
患者情報は残さない
もっとも大切な注意点です。
Obsidianに限らず、個人のノートアプリに患者氏名、ID、生年月日、住所、電子カルテの文章をそのまま残してはいけません。
避けたい例:
〇〇さん、80代、右THA術後、病棟名、入院日、詳細な経過をそのまま記載。
臨床メモとして残す場合は、個人が特定されない形にします。
残しやすい例:
THA術後の歩行練習で、疼痛が強いと荷重量が逃げる。
明日は疼痛部位と荷重量の変化を見る。
残すべきなのは患者情報ではなく、自分が学んだ臨床の視点です。
設定やプラグインに時間を使いすぎない
Obsidianには便利な設定やプラグインがたくさんあります。
ただ、最初からそこに時間をかけすぎると、肝心の勉強が進まなくなります。
新人PTがまずやることは、今日の疑問を1つ残すことです。



フォルダ構成、テンプレート、タグ、プラグインは、使っていて不便を感じてから整えれば十分です。
Obsidianの初期設定を迷わず進めたい方は、こちらで必要最低限の設定だけを整理しています。


きれいな知識管理を目的にしない
Obsidianを使い始めると、リンクやグラフビューが楽しくなることがあります。
それ自体は悪いことではありません。
ただ、きれいな知識管理を作ること自体が目的になると、ノートが臨床から離れてしまいます。
理学療法士の勉強ノートで大切なのは、翌日の評価・介入・記録・相談が少しでも具体的になることです。
「このメモは、明日の臨床のどこで使うか」
Obsidianに書く前にこの問いを持っておくと、ツールに振り回されにくくなります。
ObsidianからZettelkastenへ進むタイミング


Obsidianにメモが増えてくると、「メモ同士のつなげ方をもっと整理したい」と思うようになってきます。
そのときに参考になるのがZettelkastenです。
ただし、最初から理論を完璧に理解する必要はありません。
最初はリンクだけで十分
Obsidianを始めたばかりの段階では、Zettelkastenを意識しなくても大丈夫です。
まずは、メモの中に関連する言葉をリンクとして入れるだけで十分です。
例:
歩行中の膝折れを見るときは、疼痛、筋力、疲労感、荷重量を分けて確認する。
関連: [[膝折れ]] [[疼痛]] [[筋力]] [[荷重量]]
こうしたメモが増えてくると、自然と知識のつながりが見えてきます。
メモが増えてきたらZettelkastenを学ぶ
メモが増えたあとで、次のような悩みが出てきたら、Zettelkastenの考え方が役に立ちます。
- メモ同士のつなげ方が分からない
- 疾患名ではなく、現象でノートを整理したい
- 1つの症例から複数の学びを取り出したい
- 勉強ノートを長く使える形にしたい
Zettelkastenの具体的な考え方と始め方は、こちらの記事で整理しています。


まとめ
Obsidianは、理学療法士の勉強に使えるノートアプリです。
ただし、最初から全員に必要なわけではありません。
まず大切なのは、今日の疑問・学んだこと・明日見ることを小さく残す習慣です。
紙メモやスマホメモで十分な段階もあります。
一方で、メモが増えてきて「前に調べた内容を探し直したい」「疾患・評価・動作をつなげて考えたい」と感じたなら、Obsidianは試してみる価値のある選択肢です。
Obsidianを使うときは、次の点を意識してください。
- 患者情報は残さない
- 最初から複雑な設定を作らない
- メモ同士をリンクして、あとから探しやすくする
- 明日の臨床で使う一文を残す
- Zettelkastenやテンプレートは、必要になってから進む
まずは、今日の臨床で出てきた疑問を1つだけ残すところから始めてみてください。
そのメモが増えてきたとき、Obsidianは勉強ノートを長く使える形に整えていく助けになります。
勉強ノートそのものの残し方を見直したい方は、こちらの記事も参考になります。


Obsidianの初期設定を迷わず進めたい方は、こちらで必要最低限の設定だけを整理しています。











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